天久宮のご由緒
銘苅村に目軽翁子という人がいた。この人は、浮世を問題としないでただのんびりとその日暮らしをしていた。ある日の晩、隣村の天久の野に出てたたずんでいた。見ると山の上から気高い女人が、威儀正しい法師を送って下りてきた。山の中腹に小さな洞窟があり、その洞窟には泉があって水が流れており、そこへ行った。またある時は、女人を送って山の上へ登ることもあった。翁子はこれを見て、法師に申し上げた。どなた様でいらっしゃいますか。女のお方様は、どなたでございましょうか。法師は、私は、ただここに住んでおる者。女人は山の上に住むお方。名乗る程の者ではありませんと答えるだけであった。翁子は、それを見る度に奇特の思いをしていた。ある時は、ちゃんと洞窟に入るかと思えば、中途でいつの間にか姿が消えることもあった。この話を王と臣とに言上した。そこで、国王は、役人らにその真偽を確かめる為洞窟に向って香を置かせたところ、何もしないのに香に火が点いた。そして、この話は真実だということになり、その後社殿を造営した。私は熊野権現である。衆生を利益する為に現れたのだ。女人は、この国の守護神、弁財天であるとの神託があった。この翁子は、ただ人ではない。はじめ泉の辺で長い髪の毛を一本見つけた。それを頼りに天女に遭った。天女は、翁の家に留まることおよそ三年。そのうちに息子三人をもうけた。今もこの村に残っているとのことである。


御祭神
 主神 伊弉冉尊、速玉男尊、事解男尊

 境内摂社 弁財天
 御嶽神 先樋川の辰・龍宮神
 泊龍宮神 弁天負泰彦大神